愛しの故郷

架空の人物が作る小話と寓話置き場です。あなたの心にひとときの安らぎを。

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の5

カミツレショウガ、ラベンダー ホップの香りよたちのぼれ

薔薇のつぼみにラズベリー すぐりにイチゴ、白いモモ…乙女の祈りよ清らかに」

ずっとずっと昔から獣人族に伝わる、癒しと赦しを祈るとても古い愛の歌。

それをお客様に聞かれないように小声で歌いながら琺瑯のお鍋にお湯を注ぎ、次々と薬草を投入していく。

しばらくすると匂いは悪くないが、とても濃い茶色をした苦そうな液体が出来上がる。

これは強い沈静効果と体をあたためる効果がある。少しでも飲みやすくするためにと蜂蜜を少しだけ落とした。…あの人、苦い物が苦手そうだから。

次はもっと簡単だ。

ガラスで出来た綺麗なポットの中に白砂糖と果物、そのほかのいい香りのする物をいっぱいつめて少し放置して湿らせてからお湯を注ぐだけ。

こっちは少しぬるくして飲んでもらいたいので、グラスに氷の薄片を浮かべる。赤くて甘酸っぱい、初夏の庭のようなお茶が出来上がった。
このお茶は普段の気分転換に飲んでもいいし、あつあつのこれに馬鈴薯の白い澱粉でとろみをつけて、とろとろのそれをすすってもいい。…そうだ、明日の朝はとろみをつけたこれにしようか。