愛しの故郷

架空の人物が作る小話と寓話置き場です。あなたの心にひとときの安らぎを。

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の4

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なんなんだ、あの女は。体からケダモノの象徴を生やしているというのに、穢らわしい肉の煮込みを作っているというのに。俺が粗相をしても唸り声一つ叫び声一つあげない。

それどころか軽蔑の表情一つ浮かべず全てを片付けていなくなっていった…

俺の手が無意識のうちにケダモノ女が自分を包んだ…まるで赤子みたいに!(それもまた忌々しいし腹立たしい)毛布に触れる。

柔らかくしなやかで、それでいてふわふわで温かい。…即ちこの毛布は随分と上等な物だ。

おおかたどこかの人間の集落から奪い取ってきたんだろう。薄汚い蛮族め。

まぁいい。差し出されて思わず飲み干した水は衛生的な物だったし、忌々しい肉の匂いも部屋から消えた。それだけでも十分だ。

あの女は俺を手当てしようとしているようだ…しばらくは醜い蛮族の手当ごっこ乗っかってやるのも一興というものだろう。いざとなったら殺せばいい。相手は蛮族だ、何をしたって構わない。

それが相手に対して酷く失礼な事であることを、その頃の俺は知らなかった。意識もしていなかった。俺は無知で、どうしようもない自惚れ屋で、傲慢ちきだった。

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