愛しの故郷

架空の人物が作る小話と寓話置き場です。あなたの心にひとときの安らぎを。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の7

グラスの中身を飲み干してから倒れ込むように眠ってしまったニンゲンさんの素直さが微笑ましくて顔が緩む。 赤いお茶がついたまま眠りこける彼の口元をハンケチでざっとぬぐい、体が冷えぬよう毛布で彼をくるみ直し、夜中に何かあったらすぐに僕を呼べるよう…

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の6

お盆に載せ、お客さんのいる部屋の扉を軽くノックすると小さな小さな、沼地にいる蚊よりも小さな、鼻をすするような頷くような音が返ってくる。いい、ということなのかな…そう思い、部屋の扉を開いた。 ーーーーーーーー 頭が痛い。寒い。体が痛い。苦しい。…

詩編:ぬすっと妖精

ぬすっと妖精どこにいる?おばあちゃんのクッキーを盗んでる ぬすっと妖精どこにいる?捕まえて籠にとらえてピンで羽根を刺しましょう ぬすっと妖精籠の中ナナカマドのほうきではたきましょう ぬすっと妖精泣き出したもうやらないよと泣き出したゆるすもんか…

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の5

「カミツレショウガ、ラベンダー ホップの香りよたちのぼれ 薔薇のつぼみにラズベリー すぐりにイチゴ、白いモモ…乙女の祈りよ清らかに」 ずっとずっと昔から獣人族に伝わる、癒しと赦しを祈るとても古い愛の歌。 それをお客様に聞かれないように小声で歌い…

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の4

ーーーーーーーー なんなんだ、あの女は。体からケダモノの象徴を生やしているというのに、穢らわしい肉の煮込みを作っているというのに。俺が粗相をしても唸り声一つ叫び声一つあげない。 それどころか軽蔑の表情一つ浮かべず全てを片付けていなくなってい…