愛しの故郷

架空の人物が作る小話と寓話置き場です。あなたの心にひとときの安らぎを。

獣人少女は拾った生き物の世話をするために苦手な野菜料理を学ぶようです~其の1

クルルにとって森は家の庭みたいなもので、街道沿いの草原は商店街みたいなものだった。 

その日クルルが見つけたものは、脂ののりはじめた雌鹿に数種の名残ハーブ、皮袋に一杯のクルミに少々のキノコ、そして1人の酷く痩せこけた男だった。

 クルルが最後に見つけたもの、それが雌鹿よりもイノシシよりも尊い収穫物で、そいつが後のクルルの人生を良い方向に大きく変えていくようになるとは誰も知らなかった。

賢い事で有名な平原狼の長老でさえ、知らなかった。

これがニンゲンでよかった、とクルルは思った。
ニンゲンだったら雑食だから、自分たちと似たような物を食べる。生活形態もだいたいおんなじ。だからわかりあえる。

弱々しい呼吸と震戦を繰り返し、時折魘されて声をあげるニンゲンを肩に抱え直しながらクルルは身勝手にそう思っていた。