寓話
かわいそうの悪魔のおはなし
うさぎのミミ婦人は、優しく強い熊のベアどんと結婚した。
上昇志向の強いミミ婦人のことだから、ベアどんの純朴で優しく、力強く、賢い部分が好きになったに違いない。
ベアどんはベアどんで、ミミ婦人のやさしさと勝ち気な部分に惚れたんだろう。
しかしながらベアどんはミミ婦人が考えていたほどに逞しくはなくむしろ臆病で愚鈍で、ミミ婦人はベアどんが考えていたほどにやさしくはなくむしろ気弱で冷酷だった。
それでもなんやかんやあって2人の間に可愛い子供が出来た。
木枯らしのように冷たい悲劇の風が吹き、ミミ婦人はベアどんが子供に夢中になってミミ婦人を以前のように1番に見なくなった事を悲しむようになった。
ミミ婦人にはかわいそうの悪魔が取り憑き、何かが起こるたびにめそめそと自分はかわいそうな人間だと嘆くようになった。
わしが考えるに、ミミ婦人に必要だったのは誰かに1番に見てもらうことではなく、自分を1番に見る事だったのじゃろうな。